令和4年度第37回海洋化学学術賞
令和4年度第37回海洋化学学術賞は,令和4年4月23日(土)京都大学楽友会館にて,Tung-Yuan Ho氏ならびに本多牧生氏に授与されました.
Tung-Yuan Ho氏
所属・職:Academia Sinica・Research Fellow; National Taiwan University・Professor
略歴:
1989 B.S., Department of Marine Resources, National Sun Yat-Sen University, Taiwan
1994 M.S., Institute of Oceanography, National Taiwan University, Taiwan
2000 Ph.D., Marine Sciences Research Center, State University of New York at Stony Brook, USA
2000~2003 Postdoctoral Fellow, Department of Geosciences, Princeton University
2003~2004 Distinguished Postdoctoral Fellow, Academia Sinica, Taiwan
2004~2006 Assistant Professor, National Chung Cheng University, Taiwan
2006~2012 Assistant Research Fellow, Research Center for Environmental Changes (RCEC), Academia Sinica
2012~2017 Associate Research Fellow, RCEC, Academia Sinica
2017~ Research Fellow, RCEC, Academia Sinica
2017~ Full Professor (joint appointment), Institute of Oceanography, National Taiwan University
受賞題目:Multidisciplinary study of trace metal biogeochemistry in the ocean
推薦理由:
Tung-Yuan Ho氏は海洋における微量金属の循環,微量金属と生物との相互作用,人間活動が海洋環境に及ぼす影響を生物学的および化学的アプローチによって明らかにしてきた.おもな成果は以下のようである.(1)海水,海水中粒子,大気エアロゾルなど様々な試料の微量金属濃度および同位体比を分析し,人為起源エアロゾルが海洋微量金属の循環に重要な役割を果たしていることを示した.(2)サンゴと共生する渦鞭毛藻に関する一連の研究により,Feの供給不足が熱ストレスによるサンゴ白化現象の主な原因である可能性を示した.(3)海洋藍藻にはNiを含む酵素Ni-superoxide dismutaseが必須であることを明らかにした.さらにHo氏は台湾の海洋化学のリーダーとして国際的に活躍している.よってHo氏は海洋化学学術賞にふさわしいと確信し,ここに推薦する.
本多牧生氏
所属・職:海洋研究開発機構地球環境部門地球表層システム研究センター物質循環・人間圏研究グループ・上席研究員(シニア)
略歴:
1984年3月 北海道大学水産学部水産化学科卒業
1986年3月 北海道大学大学院水産化学研究科修士課程修了
2001年3月 北海道大学大学院地球環境科学研究科にて博士(地球環境科学)
1986年4月 認可法人海洋科学技術センター(現国立研究開発法人海洋研究開発機構)に入所,現在に至る
1992年〜1994年 駐在員兼在外研究員(米ウッズホール海洋研究所)
2003年〜2009年 神戸大学連携大学院非常勤講師
2007年〜 日本大学生物資源科学部非常勤講師
受賞題目:西部北太平洋時系列観測による生物ポンプに関する研究
推薦理由:
本多氏は,1990年代後半に始まった日本のJGOFS時系列観測(通称KNOTプロジェクト)に当初から参加し,西部北太平洋の時系列観測の維持・継続に尽力してきた.特にセジメントトラップ観測により,生物起源粒子による化学成分の鉛直輸送・再生に関わる研究を通して西部北太平洋亜寒帯域および亜熱帯域における物質循環の実像を明らかにし,多くの成果を挙げてきた.また,世界定点時系列観測組織OceanSITESに当初から寄与し,日本のプレゼンスを高めてきた.さらに,縁辺海における物質循環研究MASFLEX,福島原発事故調査研究,KEO観測(NOAA PNEL)など多くのプロジェクトで国内外の研究者と連携し海洋化学の発展に寄与してきた.よって本多氏は海洋化学学術賞にふさわしいと確信し,ここに推薦する.